研究室も一区切りついて少し時間ができました。世の中は新型コロナウイルスで騒がれていますが、家よりも大学にいる時間が多い私たちのような人間にとっては、気を付けはしますが、あまり実感もわかないのが現状です。
ところで、いろいろネットサーフィンしていると、一部の人達がPCR検査で陽性と判定された人たちを責めるといった内容が散見されました。これに関して少し話しておきたいと思ったので久しぶりの更新をしました。
いきなりですが数学の問題です!デデン!
感染者を判別する能力が99%である検査を受けて陽性と出ました。さて、あなたが感染者である確率は何%でしょう?
正解は・・・
わかりません!
いや、別に私がわからないというわけではなく、この問題からこの確率を導くことが不可能という意味でわからないということです。この確率を計算するためには、感染者を陽性と判定する確率(感度)と非感染者を陰性と判定する確率(特異度)と、検査してわかる見かけ上の陽性率(または実際の感染者率)がわかっていないと計算ができません。
では、仕切り直して、今度こそ数学の問題です!デデン!
感度70%、特異度99%の検査を行った結果、その見かけ上の陽性率は1.69%であった。その検査においてあなたが陽性であった場合、あなたが感染者である確率を求めよ。
どうでしょう?計算できましたか?では一緒に解いていきましょう。
小学生レベル
解答1:10000人がこの検査を受けたとすると、169人が陽性者と判定される。感染者は100人いると70人が陽性者で、非感染者が100人いると1人が陽性者として判定されるから、感染者100人、非感染者9900人だとちょうど陽性者が169人となる(鶴亀算は懐かしいね)。そうすると、感染者でかつ陽性者である人は70人、非感染者でかつ陽性者である人が99人となるから、この検査で陽性であったときの感染者である確率は70÷169=0.414より、41.4%となる。
中学生レベル
解答2:感染者の割合を\(x\)と置くと、陽性者の割合は\(0.70\times x+0.01\times (1-x)=0.0169\)。これを解くと、\(x=0.01\)。したがって、陽性者であったときに感染者であるという条件付確率は\(\frac{0.70\times 0.01}{0.0169}=0.414\)より、\(41.4 %\)となる。
図で理解
どうでしょうか?実は陽性者の半分以上の人が感染者ではなかったといえるわけです。このことがわかっていれば、陽性者に対する意識というのがあれほどまでに攻撃的なものにはならなかったと思います。
では実際何が足りなくてそのようなことになってしまったのでしょう?感度や特異度に関する知識?それらの知識を得たうえで考えるという思考?思考するうえで必要な計算を選択し、条件付確率を求め解釈するという知恵?どれなんでしょうか。
私は学習は非常に我々の生活に結びついているものをやっていると思っています。ただ、複雑な日常をわかりやすいように単純化しすぎた結果、何にどう使うのか、そこにたどり着くことができないまま学習を終えている人がほとんどなのではないかと感じています。非常にそれはもったいない。国語以上に数学は日常生活を送るうえで必要な知識を我々に与えてくれています。それを用いる知恵を育む。そういった機会が必要なのではないか。私はそう考えています。